アメリカでの監督、といえば、現カーディナルスのトニー・ラルーサ監督を抜きには語れない。
主人にとって、あこがれ、慕いつつも、理解してもらえないもどかしさを抱えた相手であり、
意思の疎通ができるようになってからは、これ以上ないくらい息のあった師弟関係を作り上げた相手だ。
なぜ自分はこの場面でこのように起用されるのか、
なぜこの役割をさせてもらえないのか、もしくはさせられるのか、
ありとあらゆる疑問を、主人はトニーに伝えた。
トニーは、理路整然と、その答えを主人に説明してくれた。
そのうち、トニーの背後にぴったり寄り添うのが、試合中の主人の指定席になった。
指揮官の考え、作戦、すべてを学んでやろう、何でも質問して理解しよう、
というどん欲さはトニーにも伝わり、
そのうち何かあるたびに「今こうしたのは、こうだったからだ…」と
背後の弟子に向かって問わず語りをするようになったという。
両リーグでワールドシリーズを制覇し、勝利数も、長いアメリカ野球の歴代3位(現在も更新中)という、稀代の名将だ。
その人が、「私のここまでの長い監督生活で、もっとも素晴らしかった野手はソウ・タグチだ」と公言してくれていることは、
主人にとって、どんな賞にも勝る宝物となっている。
もちろん、トニーが、スモールベースボールと言われる、
バントや盗塁といった小技を好んだことも、主人には有利に働いただろう。
人間同士、お互いの相性もあろう。
しかし、同じ目標に向かって戦う上司と部下の風通しのよさが生むパワーの大切さは、
誰よりもトニーが教えてくれたに違いない。